本記事では、大学新卒から、情報系の知識やプログラミングの経験は一切なしの状態でSES企業に入社し、3年間働いた筆者が、働いてみて分かったSES企業の実態や、働き方、プログラミング技術などありとあらゆることをぶっちゃけていこうと思っている。そのため筆者の主観や、筆者が経験した現場でのお話であると言う前提は了承した上で読み進めてもらいたい。
最終的に1万4000字くらいの長文になったので、まあ歯磨きしながらでも酒飲みながらでも、一つの読み物として気軽に読んでいただけたらと思う。
SES企業とは?
システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)の略。
簡単に言うと、労働力となるシステムエンジニアを、労働力が欲しいITベンダーさんに提供することでお金を稼ぐビジネス形態のことだ。なので言い換えてしまうと、SE専門の人材派遣会社とでもえば良いだろうか。

つまりSES企業に勤めると言うことは実質、
どこか知らない他社さんの元で働くと言うことを意味する(客先常駐と言う)。
また以下の記事では、SIer系とweb系の違いについて、詳細を記述している。
本記事とは趣旨が違うが、興味があれば読んでいただきたい。
SESはブラックか?

いきなり「SESはブラックか?」と言う見出しで、、と思うかもしれないが、これからIT企業に入社を考えている人にとって最も気になることだと思うので、最初に結論を言う。
その答えは
「依然としてブラックSESは存在する、しかし、全体的にホワイト率は高まってきている」だ。
依然として、低賃金、長時間労働、経歴詐称、日エンジニア業務と言ったSESのブラックな話題は後を絶えない。
一方で、賃金はそこそこでも、大手のホワイトSIerに守られながら、自分たちも堅くお仕事をさせて頂いている(もちろん定時帰りが基本)と言うSES企業も数多く存在する。
筆者は完全に後者だったので、かなり恵まれていた。
SE=ブラックは依然として存在する
残念ながら、SE=ブラックと言う印象の根深さが示す通り、SES企業においても、まだまだブラックと呼べる労働条件を強いられると言うケースは存在する。と言うか多重請負の温床となっているSES業界がそもそもブラックの温床であると言っても過言ではないし、IT業界のこの構造がなくならない限り業界全体がホワイトになる日は来ないだろう。
聞いた話ではそもそもエンジニア業務をやらせてもらえず、テレアポや営業、販売業務なんかをやらせられる企業もあるようなので驚きだ。
また長時間労働や、経歴詐称が常習化している企業もある。
しかし、エンジニアの働き方は全体的にホワイト化してきている
しかしながら、
近年、エンジニア業界全体的に、働き方は数年前と比べてかなりホワイトになってきているのは事実である。
SES企業の場合、常駐先となる企業さんが労働条件などのコンプライアンスを遵守し、ホワイト化してきている傾向が近年では強いので、結果としてそこに常駐するSES社員もホワイトに働けると言うケースが増えてきている。
そのため、労働条件や業績がまともなSES企業をしっかりリサーチした上で入社すれば、上記のようなブラック労働は回避することができる。
詳しくは「残業」に関するお話の部分で解説する。
SESで、エンジニアとして技術力はつくの?成長できる?

「SES企業に入社して、エンジニアとして技術力は付くのか、成長できるのか?」
と言う点は、これからエンジニアになる方にとって、一つ気になるところだろう。
先に全体的な結論を言っておこう。
SES企業で働いた場合、一通りのエンジニアとしての成長は見込めるが、長期的に見た時に、成長は見込めないと言うのが筆者の主張である。
順に理由を説明していく。
エンジニアとして技術はつく。また一通り成長も可能
まずは、「たとえSES企業に入社しても、技術はある程度習得できるし、エンジニアとして成長することもできる。」と言うことは覚えておこう。
プログラムは当たり前のように書くし、上流から下流までの一通りのエンジニアとして必要なスキルや、顧客との調整、チーム開発などの仕事感も身につけることができる。
トレンドのweb系自社開発企業などとSESを比較してみると、確かに扱っているプログラミング技術や開発態勢などに違いはあるものの、エンジニアとしての本質的な部分はSES企業に入社しても本人の取組次第で十分に習得することができる(例えば、保守性・可読性の高いプログラムを書く、網羅性が高く無駄がないテストを実施する、優先度・工数を鑑みて柔軟にチーム開発をマネジメントする、要件を顧客とうまいことすり合わせる、など)。
むしろ上記のような、昔からある程度ルールとして確率されてきたレールをSIer業界は遵守する傾向があるので、自由度の高いベンチャーに比べて、「常識的な」エンジニアになれると筆者は考えている。
一方で、案件の当たりハズレがある。そして、業界全体が古臭い。
一方で、SES企業に務めると言うことは、案件の当たりハズレがある。そして、業界全体が古臭いと言うデメリットがあるのも確かだ。
詳しくは後述するが、案件はロシアンルーレット的な側面があり基本的に自分では選べない。そのため、人や技術の面で環境的あたりはずれが大きい。そして扱う技術は古くさ〜いものが多いと言う落とし穴もある。
SESは長期的成長には向かない
また、長期的な目線で見た時に、技術的、キャリア的両方の側面でエンジニアとして成長できるかと言われたら、筆者としては、SESは長期的成長には向かないと考えている。
まず、SES企業には裁量権がなく、基本的にはSIerなどのお客さんの言うことが絶対であること、また、SIer業界全体として、保守的な態勢が基本であり、日進月歩のIT業界の動向に常に遅れをとりがちであることが筆者がSESは長期的な成長に向かないと考える主な理由である。
将来、移り変わりの激しいエンジニア業界で需要の高いエンジニアになるためには、自身で物事の・決断・その根拠を明確にできること(上流的な能力)、それらを実現する柔軟さ・技術的対応力(下流的な能力)の両者が必要だと考えているからだ。
上記の理由から、SESの場合、長期的に居座ったとしてもエンジニアとしての成長に限界があるのではと筆者は考えているため、お勧めしていないと言う訳である。
一方で、エンジニアの第一歩、つまり「下積み」としてSESを選択することは大いにありだと筆者は考えている。その理由は下記記事にて紹介しているので、参考までに呼んで欲しい(別タブで開くので本記事の続きもご覧になれます)。
SES企業の給料
給料に関しては、色々と語弊がありそうな表現を多く含むため、
あくまで筆者が感じた主観だと言う前提で聞いて欲しい。
給料は悪くない(元が太い)
SES企業の多くは、給料は悪くはない。
給料は大体、幹部とかでなければ350万〜500万が相場ではないだろうか。
ちなみに筆者の場合は、400万円くらいだった(入社3年当時、役職なし)。
これが多いか少ないは個人の見解によるところであるが、個人的にはSEと言う専門的な知識を要する技術職の仕事で、未経験の無能を雇って400万を払ってくれる世界は優しい世界だと思っている。
上記の理由として、まず、SESにとってのお客さんは、常駐先となるISerなどある程度規模の大きいITベンダーがほとんどだ。
大きなITベンダーの場合、抱えているお客さんもまた大きく、仕事の受注も安定しているため、結果として我々SESに降ってくる受け分も多い。
このように、給料は多くはないものの、元が太いので、ある程度安定してもらえるSES企業が多いと言うのが筆者の印象だ。
自社開発企業などは、自社サービスが売れなければ一瞬で会社がなくなると言う危険性をはらんでいることを考えれば、安定して仕事が降ってくると言う状況は、ある意味SES特有の強みと呼んでも良いだろう。
またスタートアップ企業やベンチャー企業などでは、技術や環境は最先端を行っているものの、資金力や顧客の絶対値が少ないが故に、給料は300万~400万と言うケースも多く存在するため、それに比べればSESは以外と給料自体は悪くない、と言うのが筆者の見解である。
未経験で入社できる割には良い給料をもらえる。
SESは未経験からでも入社しやすい。
そして未経験入社の割には良い給料がもらえると言って良いだろう。
ある程度の経験と実力、または見込みがなければ入社できない自社開発企業と違い、未経験からでも働きやすいその特徴を踏まえれば、入社3年目くらいまでは、給料的にお得な市場といえそうだ。理由は最初のうちは経験不足なので、負荷の低い仕事を任される一方で、給料はきっちりもらえるからだ。
最初は給料に見合う仕事をしていると言う実感は持てないだろうが、給料はきっちりもらいつつ、その間に自分でも勉強を継続し、実務を通じて着実にスキルアップができれば、エンジニアとしてのファーストステップにSESは悪く無いと筆者は感じた。
※一つ注意点としては、上記のお話は全て、多重請負済みの案件で無いことが前提だ。
SES企業の場合、自社の存続のため、仕事を受注するのに必死で、多重請負済みの案件を平気で受け入れてしまう会社がある。多重請負済みの場合、いくら仕事が回ってくるとは言えすでに中抜きされまくったお金しか降ってこないのである。

そのため、できれば常駐先ベンダーからの2次受けくらいのポジションを確率しているSESであることが望ましいと感じた。
それ以上はブラック要素が発生してくると思うので注意。
後は大前提として、通常SEと言う職業は技術職であり、外国などでは大学までしっかり勉強した人たちでなければ就職することのできない職業だと言うことを覚えておこう。
日本は技術的に諸外国に格段に劣っており、現在エンジニア不足と言うことも相まって、未経験採用なんてのがあること自体、そもそもラッキーなのだ。未経験入社できる人たちは現在のこのラッキーな状況に感謝するべきだと思っている(普通はチャンスすら貰えないのに比べてと言う意味で)。
SES企業での働き方
次に、SESの具体的な働き方を、筆者の経験を踏まえて紹介していく。
客先常駐
SESでは基本的に客先常駐という形で働くこととなる。
客先常駐とは、お仕事を頂いているITベンダーさんなどのオフィスや仕事現場へ直接出向いてシステム開発を行う働き方のことだ。

SES企業にとってのお客さんとは、お仕事をいただいているITベンダーさんなどになるため、「客先常駐」と呼ばれるのだ。
実際筆者も最初の研修期間以外、自社で開発したことは無い。3年間のうちのほとんどをお客さんのオフィスで、お客さんの会社のロゴが入った社員証をぶら下げながら過ごした。これはこれで好き嫌いが別れるが、一般的に、好きだと言う人はほとんどいないだろう。
どんな現場に放り込まれるかはある意味ロシアンルーレットなので、自分に合わない雰囲気の現場にアサインされた場合、辛い。
SESでの裁量権
SES企業での裁量権は、ほぼ無いに等しい。
なので、ベンチャー企業の創成期から様々な決定に関与して、自分の意思で会社を作っていきたいと言う人には向いていない。
お仕事をいただいているITベンダー様から降ってきた仕事、任された仕事を淡々とこなす力が最も必要だと言って良いだろう。
逆に指示されたことだけやっていたいと言う人には向いている。
SESでの残業
ブラック案件でもない限り、基本的に残業は多くない。
と言うかさせてもらえないケースが多い。
と言うのも客先常駐する以上、労働の拘束時間は常駐先に合わせるのが基本だ。そして、常駐先となるSIerなどのITベンダーさんは、基本、規模も大きく、近年のコンプライアンスにしっかり準拠した労働態勢をとる。
そのため基本的にITベンダーの方達も無理な残業はしないし、それはSES社員の我々にとっても同じことを意味する。
筆者の経験上、逆に残業とは最終手段であり、基本的には残業が発生しないようにタスク管理を日々しっかりやる現場が多かった。近年では、このような背景からSE=ブラックという認識も徐々に改善され、むしろエンジニアへの転職市場は人気を博しているが、労働環境の改善意識は実際に肌でしっかりと感じれた部分であった。
※ただ、もちろん全ての現場がホワイトと言っている訳ではございません。残業が多い現場も依然として存在します。
SESは基本スーツ出社
SESの場合、基本はスーツ出社の現場が多いだろう(男性の場合に限る。女性はオフィスカジュアル(私服)が基本)。
理由は常駐先のITベンダーなど大きな規模の会社は、スーツ勤務のケースが多く、それに合わせ自分たちもスーツで働くからだ。
特にシステムの依頼主さん(つまり本当のところのお客さん)と直接会って仕事をするという機会も多いため、その場合は100%スーツだ。
たまに男性でも私服勤務OKの現場があるが、まれだと思って良いだろう。
自社開発企業などの場合は、ルールは身内だけのものなので、服装のみならず髪型や髪色の制限も無い場合がほとんどだが、
SESの場合、「働く先に合わせる」のが大前提なので、割と身だしなみについては厳しめというのが常識だろう。
SESでは連絡ごとはslackではなく、基本はメール
SESで働く場合、連絡ごとのやりとりは基本的に全てメールで行う現場が多い(特にOutloolメール)。
SIerなどの規模も大きく、古くから存在している業界では、組織全体的にメール文化がまだまだ根強い。slack等の新しいコミュニケーションツールを導入している現場は筆者は見たことがなかった。
まあslackも今時ってだけなので、だから何という感じはするが、古臭いメール文化は嫌だという人は向いていないかもしれない。
SESでは、PCは基本的にWindows
SESというか、SIerが幅を利かせているこの業界全体的に、
基本的にPCはWindowsを使用する。
自分たちのみならず、システム発注元となるお客さんの企業もマイクロソフト系の商品の使用が前提だ。そのため、クライアントアプリケーションの開発にVBやC#といったマイクロソフト関係のプログラミング言語での開発を行なったり、ドキュメントは基本全てOffice(特にエクセル)で作成したりと言った働き方になる(詳しくは後述する)。
なのでMacBookを使って最新のweb言語だけで開発を行いたいみたいなのを想像していると、違う感じになるケースが多いので注意
※WindowsPCだとMacみたいにLinux系の知識に触れる機会がないんじゃないの?とプログラミング初心者の方は思うかもしれないが、実際はLinuxのサーバにTeraTermなどのソフトでログインし、サーバ操作も日常的に行うので、その辺は問題ない。
文書、ドキュメントは基本全てエクセルで作成
すでにちょろっと述べたが、
SIer業界では基本的にはマイクロソフト製品がワークツールのベースとなる。
そして、ドキュメント作成はもっぱらエクセルだ。
エンジニア界で言うドキュメントというのは、以下のようなものがあげられる。
- 設計書
- 要件定義書
- 作業手順書
- テストなどのエビデンス結果
- 社内報告書
- 申請書類
- 日報や業務報告
早い話がありとあらゆるものは基本エクセルで文書にするものと覚えておこう。
自社だけでなく、お客さんの企業も基本的にエクセルを使っていることが多いため、情報共有が容易なのも理由の一つだ。
正直エクセルは社会人ならば当たり前すぎるツールだが、業界関係なく最も便利なツールのうちの一つだと思う。使えるようになって損はないと思うので、エクセルを使い倒したくばSESで働くが良い(目的が違う)。
なので、あまりスプレッドシートなどの無料ツールを使用している現場は見たことがなかった。
またワードやパワーポイントと言ったofficeツールも使う機会はあるが、エクセルに比べて使用頻度はかなり少ない。
あと細かいが、エクセルの「暗黙のルール」みたいなのも存在して、有名なのは、「保存する時は、カーソルをA1(一番左上のセル)に合わせて保存しましょう」と言う暗黙のルールだ。他にも多分、会社によって独自のドキュメント作成ルールみたいなのがあるかもしれない、まあこのへんはどうでも良いので入社した際に気をつければOKだ。
SESでの開発・技術
次に、SES企業で働いた場合の開発・技術について解説していく。
大前提:何事も古い
細かい話をする前に、SIer業界は基本的に何事も古いと言うのも覚えておいてもらいたい。
それはプログラミング言語のみにとどまらず、開発体制やフロー、ツールと言ったあらゆる場面で古いのである。
古いから全てが悪いと言う訳ではないが、まずはSIer業界全てにおいて、「何事も古いのだ」と言う認識を持ってもらいたいのである。
それを踏まえた上で、細かい話をしていく。
SES企業でよく扱うプログラミング言語
SES企業に入社した場合、扱うプログラミング言語は、javaをはじめ、VB.net、C#、phpなどが多かった。また使用バージョンは古いものが多い。
多くのSESでは、最新技術を駆使するベンチャー企業とは対照的に、このような古くから親しまれているメジャーな言語や、マイクロソフトに関連する言語に触れることになるかと思う。
理由を説明すると、大手SIerの下で働くからという理由が大きい。
大手のITベンダーは、古くからの太客を支える既存システムが既に存在する。しかしながら、これらシステムは、上記で挙げたような、今となっては古い技術で作られたシステムが、今現在も稼働中と言うケースが多い。また基本的にフレームワークは使用しておらず、使っていたとしても、ひと昔前の廃れたフレームワークをしているケースがほとんどだ。
上記の理由を解説すると、まずフレームワークに関して、フレームワークとはそもそも0から何か生み出す必要があるスタートアップ企業やスピード重視の開発に適しているものだ。既存の古参システムをリスクに晒してまでこれからフレームワークに乗り換えるメリットは大企業のSIerにとって皆無であるので、わざわざフレームワークは使わないよと言うのが基本スタイルである。
また、新しい言語へのバージョンアップや、システム全体の抜本的なリプレイスには大きな工数がかかる他、バグや不具合の発生した場合「既存顧客の損失によるマイナス影響」が甚大ではないため、そう簡単に技術の入れ替えができないのだ。
マイクロソフト系の言語が多い理由は、システム発注元企業も基本はWindowsを使用している企業がメインのため、Windows上で動くマイクロソフト系の言語での開発が主流となる。
以上の理由から、最新の環境やトレンドの言語(rubyとかpythonとか、etc)でweb開発をしたい!みたいなイメージを持って入社すると違う感じになってしまう確率が高いので、そこは注意しよう。
バージョン管理は基本SVN
バージョン管理とはソースやドキュメントなどの更新結果をその都度バージョンとして保存してくれる機能のことだ。
有名なものだと、古くから親しまれているSVNと、
今ではエンジニアスタンダードと言っていいGitがある。
このうち、SIer業界では、バージョン管理には、依然として、SVNを使っているところが多い。
どちらが良い、悪いと言う点では、後出のGitの方が優勢かな〜と実際に使ってみて感じている。
「違いがよくわからない、そもそもGitしか知らない」と言う人も近年では多いと思うので、下記に両者の違いを解説した記事を参考として載せておく。
Gitを使っているところもあるのか知らないが、筆者の経験した現場は全てSVNでのバージョン管理だった。
後、ソースコードの比較もGitではなく、どこもWinMergeというフリーソフトを使用していた(Windows向けのソース比較用アプリケーション)。
SES企業での開発フロー(大体ウォーターフォール)
SES企業の扱う開発フローは、ウォーターフォールが多い。
アジャイル開発はあんまりないと思う。
スタートアップ企業の場合、とにかくPDCAを回して改善を繰り返す必要があるため、スピード重視のアジャイル開発が向いているが、SIerなどの大手ITベンダーの場合、既存の顧客が大きく、まずは「既存顧客を失わない」という理由から、より慎重な開発体制のウォーターフォールの現場がほとんどだ(まあ実施は古くからあるウォーターフォールの手法を組織的に変更できず、ずっと踏襲してきているだけという側面の方が大きい気がするが)。
ウォーターフォールとアジャイル開発、どちらが良いと言うことはないが、トレンド的にはアジャイル開発なので、ウォーターフォールが古くさいなら私は嫌だ!と言う人はSESへの入社はきをつけよう。
SES企業では、下流工程がメイン
SES企業では、下流工程が仕事のメインとなる。
下流工程とは、開発において、コーディングやテストと言ったフェーズの作業のことだ。
逆に上流とは、要件定義や設計などのフェーズを言う。
特に最初は下流工程のうち、テスト業務から入るケースが多い。
テスト言うのは主に単体テスト(ユニットテストとも言う)のことだ。
単体テスト自体はたしかに1番ハードルが低く、導入には最適な作業?でもあるので話は分かる。テストを通じて、自分が関わるプロジェクトのシステム理解にも繋がるし。
だけどよくあるのはテストばっかやらされて、エンジニアとして全然成長しないこと。経験が少ないのを逆手にとられ、いつまでも都合よくテスト業務ばかりさせられていては、エンジニアとしての成長はもちろん見込めない。しかし、SES一年目にはありがちなことかもしれないので気をつけよう。
上記のようなことが起こる理由を解説すると、SIerなどの大手企業は上流〜下流の全ての工程を自社社員のみで行うよりも、誰でも「こなせる」下流部分はSESなどに外注してしまった方が、安く、効率的に開発を進められるから、と言う背景がある。要は、SESは都合が良い存在なのだ。
つまり裏を返せば、SESにいる以上、基本的には下流工程のみの作業がメインであり、エンジニアとして必要な上流工程の知識、経験を得る経験は少なくなると言うことなのだ(※もちろん全ての現場がそうとは限らない)。
エンジニアとしての一通りのキャリアを積み上げたい、ゆくゆくは上流まで全て自分の力でこなせるようになりたいと言う方は、長くSESにいることはお勧めできない。
(その他)SES企業あるある
では次に、少し息抜きにSESあるある、なんかを紹介していく。
次に紹介する例は、SES企業ではどこでもあるあるの話なので、よりリアリティを持ってSES入社を想像できることだろう。
OJTが基本(習うより慣れろ、研修コスト削減)
SES企業に入社すると、業務の習得はOJTが基本みたいな会社も多い。
上記の理由は、教育や研修にもコスト、時間がかかるためだ。特に自社にメンターになるような人材をプールしておけるほど余裕がない(みな客先常駐で働くのが基本のため)、と言う企業の場合は尚更だ。
もちろんOJTが基本ではなく、しっかりした自社内での研修を実施した上で現場に出してくれる企業も存在するし、実際に筆者のSES企業では、約3ヶ月ほどの自社研修(プログラミング・IT基礎・仕事上のマナーなど)を実施してもらった。
なので、就活時はなるべくOJTが基本か、研修はあるのかと言う点に注意を払ってSES企業をリサーチしてみると良い。
待機期間
入社後、現場に出て働くこととなるが、必ずしもすぐに現場に出されるかと言われればそうでもない。アサイン先の現場が見つからないと言う理由から、エンジニアが事実上、「お仕事待ち」の状態になることがある。これを、「待機期間」と呼んだりする。
特に、経験を積んだエンジニアならばどの現場でもすぐ行って来いとなるのだが、新人の場合はそうはいかない。まだまだ戦力とは言えないので、現場が決まるのに時間がかかることがよくあるのだ。その決まるまでの期間が、「待機期間」と呼ばれたりするのだ。
待機期間が発生している間は、自社内の案件にアサインされたり、引き続き現場に入るまで技術のお勉強をしたりする。
その間自社の営業さんが、なんとかアサイン先を見つけようと四苦八苦するのである。
面接
候補となる常駐先が見つかると、
エニジニアは常駐先企業(予定)に面接をしにいく。
「面接?なんの?」と思うかもしれないので、その理由を説明していく。
自分たちSESの社員を協力社員として雇ってくれるSIerなどのITベンダーは、基本的な体制として、誰でも協力社員として雇うわけではなく、それなりにちゃんと仕事をこなしてくれそうな人柄であるかを見極めた上で現場にアサインの許可を出すのである。それを見極めるための面接だと思ってくれれば分かりやすいだろう。要は現場アサインの最終面接と言ったところだ。
と言ってもSESに未経験入社したピヨピヨ社員には、最初は経歴もクソもないので、常駐先企業の方もそれを分かった上で雇ってくださると言う感じになる。
なので最初の面接で大事なことは、「こいつは現場に出ても大丈夫そうだな」と言う雰囲気やオーラが伝わるよう、丁寧に面接に臨むことだ。
※面接の際、入社したばかりなのに「◯◯言語での開発経験が3年以上あり~~」などと自分の経歴を盛られる場合などは注意しよう。
このような企業の場合、エンジニアの経歴に嘘をついてでも無理やりに現場に放り込みたいと言う状況なので、それはすなわち、業績がよろしくなく、「なんでも良いからお仕事してこい!!」な状況だと言うことである。
この場合、どんなブラック案件でも受け入れてしまっている可能性が高いか、またはブラックでなくとも、現場で働くエンジニアのケア体制が整っている会社ではないので、エンジニアが消耗しやすい環境であることに変わりはない。
面談の際、ちょっとでも会社が自分の経歴に対して虚偽の申告をしていると思った場合は、その場しのぎである可能性が高く、将来的に会社にも自分にも結局メリットが無いので、早めに縁を切ろう。
プロパーとの関係性が全て
■ プロパーとは?
プロパーとは、常駐先ITベンダーの社員さんのことだ。
自分たちSES企業の社員にとって、お仕事をいただいてる絶対的な存在なので覚えておこう。
大前提として、お客様(プロパー) > 自分たち(SES)と言う関係性は常に意識することとなる。
同じシステムの開発を行うエンジニアといえど、自分たちSES企業の社員にとって、あくまでお金をいただくお客さんだ。プロパー側からすれば所詮は数あるSESのうちの一つに過ぎないし、反対に、自分たちSES側からすれば会社存続のための食いぶちだ。つまりビジネス関係なのだ。
フラットな関係を謳っている現場もあるし、本当に人柄の良いプロパーの方が集まった現場もあるが、やはり皆ビジネス関係上の「壁」は最低限意識した上で、同じ開発現場の社員として働いていくと言うイメージを持ってもらうと、問題ないかもしれない。
定例会・定例イベント
よくある話だがSESの会社の場合、
定期的に社員一同が集まって行うイベントがどの会社にも存在する。
特にあるあるなのは。月一の帰社日だ。月に一度、普段常駐先に仕事に行っている社員たちが、自社のオフィスに戻ってくる日を儲けるというものだ。また半年に一度や年に一度、会社を全体をあげての会食イベントなども用意しているところもあるようだ。
これらの目的は、あくまで主観でしかないが、普段は皆バラバラの常駐先で働いている社員に帰属意識を持たせるほか、同志と会ってお互いの状況を分かち合う、必要に応じて内部で話し合いをする(幹部たち)など目的がある。まあ実際のところこれらのイベント強制ではないため、別にわざわざ会社の人に会うよりも早く家に帰ってゆっくりする派の人も多い。
(その他)SES企業で、こんな経験をした
次に、実際に筆者がSES企業で経験したことをいくつか紹介する。
新卒一括での新人研修(入社〜3ヶ月)
SES特有のものではないかもしれないが、
Java、SQL、ITリテラシー、仕事のマナーなどを中心に、3ヶ月ほど研修を受けた。
1ヶ月ほどプログラミングの基礎や情報基礎的なお勉強をした後、
その後は模擬プロジェクトと言う形で、チームを組んで開発を進めたりもした。
新人研修でプログラミングを学べたことは筆者にとってとてもありがたかった。
筆者は文系未経験ということもあり、プログラミング自体ついていけるかどうかも不安だったため、
お金をもらいながら上司付きで勉強できるこの期間は最高だったし、何より心に余裕ができた。
オンラインスクールなどに通う余裕がない、プログラミングについていけるか不安、と言う方は、
まずは研修制度がしっかりしていそうな企業を探すことをお勧めする。
案件たらい回し
案件たらい回しを経験した。
案件たらい回しとは簡単に言うと、配属される案件(プロジェクト)を、短期間でいくつも変更されることを言う。
たらい回しは一般的に、一つの案件の期間が短いため、プロジェクトの業務理解に費やす労力が大きい割に、しっかり腰を据えてスキル定着をする時間が少ない。したがって、エンジニアの本質的なレベルアップに繋がらないため、経験豊富でないエンジニアにはあまりよしとされない。
まあ、たらい回しといっても、1年目だったので技術的に何もできるわけなく、各案件のテスターたらい回しだった。
正直「設計から開発までやったよ〜」って言ってる同期がうらやましかった。SESに入る以上、このようなたらい回しもといった案件のしわ寄せも自分たちの仕事になるので覚悟しましょう
SESに入社するには
最後に、もし、このブログをきっかけに、「とりあえずSES企業もありなんじゃないか」と思った方のために、SES企業への入社のポイントを紹介しておく。
就職支援サイトは大手就活サイトでOK
SES企業への就職活動をする際は、GreenなどのIT専門の転職とかじゃなくても、リクナビなどの一般の大手就活サイトなどにも求人は普通に乗っている。企業情報や評判なども、ある程度の規模のものであればググれば分かるものが多いので、根気強く情報収集しよう。
SES企業選定には、ブラック要素を見抜くのが大事
SES企業はわざわざ「SES企業です」なんて書かない(良い面しか書かない)し、営業とか、テレアポとか、電話販売とかの非エンジニア業務までも、当然のごとく「エンジニアとしての成長に必要」と意味不明の理論で純粋な就活生を搾取しにかかってくる。
要はSES企業に入社を志す場合、入社までのハードルとしては比較的高くない一方で、いかにブラック要素が少ないかを見抜くことができるかが重要となってくると言うことだ。
ここまで紹介してきた情報を参考に、一人でもブラックSESに騙されない就活生が生まれてくれれば幸い。
ポートフォリオとかはあんまり必要ない
SES企業への入社を志す場合、ポートフォリオの有無はそれほど重要ではない。
理由は、以下の二つ。
- 自社開発企業のように、「0から何か生み出す個の力」はそれほど重要視されない
- お客さんの元で「言われた通りきちんと働けるか」が重要
SES企業の場合、自社開発企業や受託開発企業と比較して、「個の力」を重要視するウェイトは少ない(もちろん最低限の学歴や、SPI試験などのある程度の基礎学力は求められるし、個の能力が高いほど有利なのは前提である)。
それよりも、どれだけ、「組織の中で秩序を守って適切に働いてくれるか」の方を見ているなあと筆者は感じている。
SIerなどの既存システムと、それを管轄するプロパーの方々との関係をうまくやっていけそうな能力が求められるのは一つ、自社開発企業や受託開発企業に求められる能力とはまた違った能力だ。
なので、就職活動にポートフォリオを持っていったとして、損はないが、そこまで重要な要素ではない。それよりも、きちんとした態度で、適切な受け答えができるよう、面接の訓練でもした方がよっぽど効果的であると筆者は感じている。
SES企業への就職はあり?なし?
最後に、SES企業への入社はありか?なしか?と言う目線で筆者の見解を述べて終わる。
結論:入門として(あれこれ悩むよりだったら)良いんじゃないか
筆者は、SES企業への入社は、入門として(あれこれ悩むよりだったら)良いんじゃないかと考えている(もちろん、最低限のリサーチは必要とした上で)。
それは以下の理由からだ。
- とりあえずのSEとしての適性は判断できる
- SEのオーソドックスが経験できる
- 未経験のわりにSESは給料悪くない(当たり外れはあるしブラックなのもあるが)
- 転職のための下地ができる(これ重要)
1〜3はすでに述べてきた内容だ。
エンジニアの本質的な部分を未経験からでも学べるチャンスがあるSESは、それはそれで筆者は全然ありだと思っている。その分、弱みにつけこむブラックも多いので、そこは自己責任で頑張って欲しい。
4に関しては、ここまでで述べてこなかったが、転職前提のこのIT業界で、そのうちの一社目にSESを持ってくるのは、悪い選択ではないと思っている。
IT専門の転職サイトの求人を見ても、条件として、「開発経験3年以上」とか、「〇〇の言語での開発経験優遇」などの条件はよく目にするし、どの企業もまずは最低限の基礎ができている人材が欲しいのがよくわかる。
大体エンジニアとして周りが見え始めるのは、ちょうど2〜3年働いた頃の時期だと思うので、悩んだり背伸びしたりするよりならば、比較的未経験からの敷居が低いSES企業へまずは入社し、2〜3年経ったころに、自分に適性がありそうでまだエンジニアを続けたいと思ったならば、もう少しランクが上の会社に転職をすれば良いし、逆に、エンジニアは自分に向いていないと決定的に感じたならば、エンジニアの道を辞めると言う選択を確信を持って取ることができるので、そう言う意味ではSES企業への入社は、入門としてありだと筆者は考えている。
終わりに
いかがだっただろうか。
筆者はなかなか手応えを覚えた書きっぷりだった。と言うか疲れた。
上記以外にも、筆者はSEとして学んだことを、技術目線以外でもブログに書き起こして発信しているので、今回の記事がよかったと言う方は他の記事もぜひ呼んでもらいたい。
以下の記事では、SIerとSESの違いについて、詳細を記述している。
両者の違いが理解できていない人は、本記事を読む前に以下記事をお読みいただければより深く本記事の内容が掴めるかと思うので、ぜひ参考にしていただきたい。